AntiquesAMUSE

/特集記事・欧州買い付け日記

0615

JALの翼の上で、PCに、向かっている・・・・・。編



4月10日(木)

恐ろしく、部屋に荷物が、散らばっている・・・・。
うーん、何だか、調子が出てきた。
やっぱり買い付けは、こうでなくっちゃね!がぜん、やる気になってきた。
梱包材も手に入ったし、今日は、一日、どこにも出ずに、梱包を決め込む。
木曜日は、アミューズの定休日だが、ロンドンでも、ほとんどマーケットは休み
買い付け旅行も、何処かで、梱包の日を一日はもうけないと、帰れない。
新聞の包みを、片っ端から、開けていく。あっという間に、ごみの山!
くしゃくしゃになった新聞紙とは裏腹に、美しいヴァセリンシェード達が、
次々と顔を覗かせる・・・何て、魅力的な色・・・。
もう20年間、このガラスの魅力に、魅せられ続けてきた・・。
戦争もあった、天災もあった、扱う人の、ちょっとした不注意だって、
あったはず・・・ガラスはもろくはかない。
割れて当たり前の製品たちが、100年近い月日を、生き抜いて、
今なお、ここにその姿を、留めている事に、心から感動する。
かつて100年以上も前に、誰が、ウランをガラスに練り込もうと思い立ったの
試行錯誤の上、こうして製品になった時、この美しさを、
想像していただろうか・・・?
その仕上がりに、感動と興奮を覚え、寝食を忘れて、作り続けたに違いない。
そして、出来上がった作品に心震えながらも、
意気揚々と、発注先に、見せたのだろう。
そして、どんな人の手に渡り、どんな人が、このガラスに光りを入れ、
眺めていたのだろうか・・?
アンティークの楽しみの一つは、作品の裏に隠れている、
幾重にも重なる歴史の履歴に、想いを馳せる事でもあると、私は想う。
もちろん、時代背景も、忘れてはならぬ。
NHKでやっていたシャーロックホームズは、アンティークファン必見の、
教科書的番組である。現在は、放送していないが、ビデオにあると聞いた。
機会があれば、是非見ていただきたい。
至るところにアンティークが溢れ、アミューズで見たことのある小物たちが、
続々搭乗する・・。こんな風に使うのね!なんて、納得の連続ですから・・・・。
おっと、アンティークに、酔いしれている場合ではない。現実に引き戻される・
梱包進めていかないと、いよいよ、やばい!帰れない!
一心不乱に、梱包に没頭する。いつもながら、手も指も爪も、悲しいばかりに、
真っ黒け・・・しかしながら、成果はある。
積み上がっていく箱が、達成感の極み!うーん、頑張った!
4個の箱が出来上がった。今日は、これでよしとしよう!
あと、残すところ、3日となった・・・。そろそろ、エンジンが掛かり始めた。

さあ、うかうかしては、いられない・・・。

0615


6月15日 (日)


あれっ?日記の日付けが、突然、6月になっているのに、
お気付きの方も、いらっしゃるかも・・・。
私は今、自分でも驚いた事に、ロンドンに向かうJALの翼の上で、
PCに、向かっている・・・・・。
超満員の、寿司詰めエコノミークラス!
真ん中に4席連なった狭いシートと、私の席番号が一致!
今から、ロンドンまでの12時間、この席にお世話になる・・・。
想像はしていたけど、クラっとした。
身動き1つ出来ない。座席に、身体を押し込む様に、お尻から、座ってみる。
これは、ちょっと、想像以上に狭いぞ・・。肘掛けって、隣と共用なんだ・・・。
分かってはいたものの、あらためて実感した。
間違っても、小柄とは言えない私。正直、パソコンを開く事自体、気が引ける。
隣の席の若い青年に、肘が触れぬ様、気にしながら、
2割ほど、縮めた身体でパソコンを叩いている。
本日、空席は一席もない。さすがに、
満席のエコノミークラスは、その想像を遥かに上回る迫力・・・。
まだ、前回の4月の買い付け日記が、完結しておらず、
日記上では、日本に帰ってもないというのに、
現実は、ロンドンに向かう空の上。
窓は遠いので見えないが、今は、ウラル山脈の上を、航行中らしい。
落ちたら、捜索隊が来るまで、体力、持つかしら・・・。
生き延びれるのは、ランボーくらい・・・。
席が狭いと、ネガティブになって、おかしな事ばかり考えるらしい・・・。
今回、実は、思いもかけず、信じられない速さで、買い付けの日程が決まった。
本来なら、次の買い付けは、小物のみで、7月の終わりくらいを、予定していた。
ところが、ここにきて、突然、あちらこちらから、
家具が欲しいとのご要望が高まった・・。
ここ数年、すっかり、家具の市場も変わってしまい、
私自身、コンテナの入荷を据え置きしてきた。
世の中の流れが変わり、きっとまた、たくさんの家具を集めて、
家具屋としてお役に立つ日が来る、そう信じつつ、3年以上も、
じっと模様を眺めながら、小物の入荷だけで過ごしてきた。
もともと、家具が大好きで、家具屋として創業し始めたアミューズだけに、
このまま小物屋になってしまうには、
どうしても、納得がいかなかったというのが、本音である。
20年間も英国で、家具買い付けのサポートをしてくれていた
デリック、ジョーンズ氏にも、今後の家具の商売について、言及を避け、
意思表示をしないまま、連絡を取らなくなっていた。
又、家具を始めるなら、その道40年を越す、
デリック氏の協力は、必要不可欠である。
私の家具屋としての本格的な商売の始まりは、20年前にさかのぼる。
形だけ、アンティーク屋として、オープンはしたものの、
他力本願の商売は、先が続かなかった。
当時、アンティーク家具の海外からの仕入先が分からず、
コネも無く、途方に暮れていた私。
国内仕入れでは高すぎて、とても折り合いがつかず、
ついに、通勤のガソリン代にも困る始末・・。
アンティーク家具の仕入先など、どうして調べたらいいのか、
検討もつかず八方塞がり・・。
当時、別の商売を立ち上げていた友達に、相談すると、
専門誌に広告を載せる事を勧められて、最後の力を振り絞り、
一度きり、読売新聞社の有名なアンティークの本に、小さな広告を載せた。
その高い広告代の支払いもたいへんだったが、
広告を見て、わざわざ問い合わせて下さる方に、
「在庫はたいして無いんです。ごめんなさい。遠くから来ていただいたら、
がっかりなさるかも・・。」
何の為に広告を出したのか、後悔の連続だった。
まだまだ、愛知県では、アンティーク屋は珍しく、
ましてや、その卸元など、誰も教えてくれなどしなかった・・・・。
さすがに、もう無理かもしれない・・・。絶望感が、見え隠れしていた。
ロンドンでは、そんな頃、さる大手会社のロンドン支店長の奥様だった、
田中靖子さんという女性が、当時、アメリカを相手に、
大きくアンティークビジネスを、展開していたデリックジョーンズ氏と、
偶然、隣人となり、日本を相手に、アンティーク家具の卸をするビジネスの、
立ち上げを勧めていた。
ある日、めったに掛からない店の電話が鳴った!
それが、私にとっては、運命を分ける電話となった。
それは、見知らぬ女性からの電話。上品で丁寧な言葉、包み込むような声、
ロンドンからだと言う。
あの小さな広告を頼りに、ロンドンから電話をくれたのだと言う。
「突然の不躾な電話で、申し訳無い」と恐縮しきりで、
今思えば、彼女にとっても、初めてのビジネスだったことが伺える。
内容を聞いて、驚いた。ロンドンから日本に、アンティーク家具を、
卸売りする先を探していると言う。
我が耳を疑った。それは、私が何よりも、待ち望んでいた仕入れ先の話だった。
調べても、調べても、自力では、見つけられなかったのに、
突然、向こうから、やってきた・・・。
神様は、本当に、壮大な計らいをなさる・・・。
こんな準備が進められていたなんて・・。涙が出た。
こうして、私の商売が本格的な展開を見せることとなる。
それから、約20年間、田中さんと、デリック氏に助けてもらいながら、
家具のビジネスをやってきた・・・。
数年前、田中さんは、ご主人のリタイアを機会に、
アンティークビジネスから、手を引かれた。

今回、家具のリクエストをもらって、
3年以上も、ご無沙汰しているデリック、ジョーンズ氏に、
とにかく連絡を取ってみた。
彼もとうに、60歳を過ぎている。
もう、家具のビジネスから、手を引いているかも・・。
デリックの、日本の卸し先も、ほとんどが、やめてしまったらしい・・・。
不安は、あったものの、心の何処かで、
彼は、まだリタイアしていない事、信じていた。
20年間も、家具の買い付けのサポートしてもらってきたのだもの、
やっぱり彼無しでは、アミューズの家具のビジネスは、有り得ない・・・。
Eメールを送ると、すぐ返信が来た。
恐る恐る開封する。第一声は、私からの突然のメールを見て、
驚いているという言葉!
そして、僕は、リタイアしていないよ。
80歳くらいまで、この仕事、続けるつもりだと言う。
私は今、弾かれた様に、ロンドンに向かっている。
こんなに急に、チケットを取った事も、
こんなに短い旅行準備だった事も、私には無い・・・。
これから始まるデリックとの買い付けを、
つぶさに、ロンドンからライブで、お届けするつもりです!

お楽しみに!

それにしても、身体が、こわばって、まるで、石のようです・・・・・・・。
つらっ!


0615




6月16日(月)

昨日の飛行機は、わたしの20年の渡英経験の中でも、
歴史を塗り替えるほど、凄かったが、
またまた、入国審査も、普通ではなかった。
一列、40人ほどの列が、9列にも折り返して、
飛行機が到着する度に、膨れ上がっていくのである。
ちょうど、6月から、8月中旬までは、昼間が長くて陽気もいいので、
ヨーロッパは、行楽シーズンとなる。
観光でイギリスに帰る人、イギリスに入る人、この時期の日曜の空港は、
恐ろしく混み合う。そして、入国審査がやたらに厳しいので、
一人一人に、時間がかかる・・・。
最後尾についた私には、入国審査員の姿すら、チラッとも見えない。
あまりの凄さに、記録しようとカメラを構えたら、
大声で「ノーカメラ!!」と、叱られた。
くわばら、くわばら・・・!うちの店長の石川は、何年も前、
初めてのイギリス留学の際に、ちょっとした、書類と事実の食い違いから、
イギリスまで来ながら、この入国審査場で引っ掛かり、審査のゲートを通る事なく
そのまま日本に、送還されてしまった事があるという。ね?怖いでしょ?
ハイシーズンと呼ばれるこの時期の、日曜日だけは、
ユメユメ入国なされませんように・・・。
さてと、何とか身体の凝りも取れ、
いつものように、何故か、午前2時に目を覚ます。
私は、いつも、到着と同時に、すべての荷物を、
洋服ダンスや、チェストに納めないと、気がすまない。
ところが、今度は、ホテル予約が急だった為、
希望のシングルルームが、前半、取れなかった。
3日後の木曜日まで、恐ろしく広いツインルームに宿泊し、
夕方から、シングルルームにお引越し!
結局、又、荷造りをしなくてはならないので、
すべての荷物を、スーツケースから引っ張り出しては、使っている。
残念ながら、今一歩、落ち着かない・・。
いつもの様に、収支と、書類整理を終え、
少し早いけれど、私の好きな、月曜のマーケットに出掛けた。
さすが、ハイシーズン!カーテンを開けると、
午前5時半には、すっかり陽は高く上がっていた。
ヨーロッパのこの時期は、気をつけないと、寝不足になってしまう。
午後7時なんて、まだ、真昼間!陽も傾いていない気がする。
午後10時位までは明るいので、つい、帰宅が遅れてしまう。
スーパーの店員も、道行く人も、みーんな、あくびをしている・・・・・。
いつもどおり、マーケットに到着!タクシーを降りるが、さすが、初日・・。
まだ、勘が戻ってない!
レースのドイリー、ほんとに安いものだが、
いつもの倍の価格で、買ってしまった・・・・。
(後に、同類の品を安く買って、価格調整した。)
木のトレー、どなたかが欲しいって言ってらっしゃったな!
記憶中枢が、少し働き始めた・・・。今日は、掘り出し物はないが、
こんなところで、19世紀のミントンのタイル、見いつけた!
この時代の深いグリーンは、独特である。日本人好みの色とモチーフ・・。
2枚しかないが、仕方ない・・。のんびりと買い進めていく・・・。
午前7時を回った頃に、突然、身体が、冷えてきた。寒い!
しまった!ニットのカーディガン、忘れてしまった!
このマーケットは、真夏でも寒い日があると、前回、書いたばかりなのに、
紫色の唇になって、震えるのは、観光客じゃなく、私?だった・・・・・。
確か、マフラーだけは、持ってたはず・・。
ウールのマフラーを首に巻いて、再度、買い付け始める。
やはりここは、特別凄いものは、買えないけれど、楽しめるマーケット・・・。
芸能人の生写真、売っているスタンドもある。
ちょっと、休憩も兼ねて、ローリングストーンズ探してみた。
あった、あった!でも、若いときじゃないので、皆、ちょっと、怖い・・・。
キースリチャードの単品もあったが、
皺が深いし、顔だけなので、アップすぎて、凝視できなかった。
一枚600円もする・・・。あっ、ポストカード!
若いときのミックジャガーと、バンドメンバーの2枚にした。
まだ、ブライアンジョーンズが写ってる・・・。
さあさあ、休憩はこのくらいにして、仕事に戻る。
そろそろ、周りのお店も出揃ってきている。
見なかったところ、無かったかな?。やっぱり、
特別じゃないけれど、何かは買えるマーケット。
「えっ?、あんなとこ行くの?何か買えるの?」そう言われても、
やっぱり、私は、好き!何を買ったのかしら?けっこうな重量になった。
そろそろ、用事を足しながら、帰ることにした。
携帯電話のプリペイド分、残高がほとんどなくて、電話が使えない。
日曜にロンドン入りすると、携帯屋さんが休みで困る。
そうそう、トラベルカードも残金が無くて使えない。
一週間、載り放題で、5500円位・・。
タクシーに比べたら、安いと思う。ロンドンの中心に宿泊すれば、元は取れる。
自転車代わりにスーパーまでとか、一区間単位でも、何回でも乗ることが出来る。
5分も待てば、次も来る。地下鉄も、バスも共用なので、わたしには、ぴったり!
車が無いので、おおいに助かる。
そうそう、スニーカー忘れてしまったんだった。
買わないと、明日からもハイヒールで出掛けることになる!
今日は仕方なく黒のパンツスタイルにハイヒールで来てしまったけど、
ジーンズにスニーカーが、鉄則!帰り道、靴屋のウインドーに飾られている、
先の細い皮製の、白いスニーカーに、目が留まる。
履かせてもらう。カッコいい!!スニーカーじゃないみたい・・・。
そんなに高くも無いので、購入する。
箱に入れてくれる時、ふと、メーカー名が気になった。
店を出て、箱を出してみた。
ONITUKA TAIGER
お・に・つ・か・た・い・がー、うん?
オニツカ タイガーって、やだ、もう、日本製買っちゃった!!!
結局、ホテルに戻ったら、午後7時を回ってしまった!初日は、終了!
お疲れ様でした!

0615


0617

ロンドン郊外の競馬場でアンティークフェアー



6月17日(火)
今日は、Esher(イシャー)という、
ロンドン郊外の競馬場で行われるアンティークフェアーに出掛ける。
2ヶ月に一回の大きなフェアー。かつては、550軒が、軒を並べた。
オープンは、午前11時!(以前は正午だった・・。)
ロンドンから車で30~40分くらい掛かる。
規模は小さくなったもののけっこうな数の業者が(250件?)集まるので、
ほんとうに、見応えはあるのだが、私はかつて、これという物が買えた事が無く、
いつも、大きな期待の割りに、成果の無いフェアーでもある。
お客側も、店側も、同時に入って、店を立ち上げるからだろうか・・・?
ウロウロするばかりで収穫が無いという感じが、否めない。
いつも、焦って走っているうちに、終わってしまう。
電車で行ってもいいのだけれど、またまた、
ロンドン在住の日本人ディーラーの方の車に、厚かましくも、
便乗させていただく事にした。ほんとうに、いつも、ありがとうございます!
10時半に会場に着いた。お茶を飲みながら雑談して、開場を待つ・・・。
運転してくれたディーラーの方から、
「ここはね、あんまり買えた事がないのよね・・。」との言葉・・。
もう一人のディーラーも、「皆、知ってる業者の所に、ワーッと走っていくけど、
知り合いの業者がいないと期待は、出来ないのよね・・。」という。
何だか、急に安心した・・・。
なーんだ!皆、そんなに買えるフェアーじゃないんだ!知らなかった・・・・。
心のつかえが取れて、妙な焦りが、消えていった・・・。
買い付けというのは、不思議なもので、微妙な心の動きが、反映する。
ほんのちょっとの自信や、安心感が、大きく影響するものである。
今日は、何となく、いい予感・・・。
11時!開場した!走る、走る!皆、走る!
私は、逸る心を懸命に抑えて、深呼吸・・・。
ゆっくりと見回して、商品を並べ終わった店から、じっくり見る事にした。
その間にも、椅子を持った業者や、エンジェル像を持っている業者が、
セットアップの為右へ左へ、走り回る。”あっ、それ見せて!”
ついつい、釣られて、ついて行きそうになる・・・・。
危ない、危ない!それを追っかけていくと、
今まで通り!ペースが乱れて、たいへんになる。 
縁のある品は、つぶさに見ていけば、必ず、もういっぺん、出会えると信じて・
チェリーアンバーのネックレスをたくさん持っている業者がいた。
ビーズ作家の友人から、買い付け指令が出ている品!
(ビクトリア時代に流行した赤い琥珀のネックレス・・・。
この魅惑的な赤色の琥珀は、一度、溶かして、再度、固めるらしいが、
その際、人工的に赤く発色させる製法が、
未だ、ほっきりと解明されていないらしい。
この琥珀に関しては、色んな説があるが、まあ、古いものであるというところに、
重きを置いておこう・・。
アンティークは、誰一人、それが造られた時代に、生きてはいない・・・。
真実は、誰も知らない・・・。
すべてが、ある意味、想像の上に立っている・・・・。う~ん、ミステリアス・。
その業者は、セットアップがたいへん早くて、ジュエリー類ばかりなのだが、
すっかり綺麗に並んでいる。
初めて見る顔だけれど、私が、商品を触っている間中、
無遠慮な目で、こちらを見てる。
チェリーアンバーを、ネックレスを飾ってある棒から外そうとすると、
凄い勢いで走ってきて、外してくれる。
きっと、何度も、盗難にあっているんだなと思った・・・。
それにしても、たくさんある・・・。
選ぶ側には、数が多いのも、たいへんだと言う事が分かった。
いったい、どれがいいのか、分からない。
色、艶、ぜんぶ違う・・・。
一本、文句無く気に入った!あとは、どんぐりの背競べ、価格を聞いてみる。
色の濃いほうが、高い・・・。
傷は、大丈夫か?高いほうが、確かにコンディションはいい!
ちょっと、消費者の気持ちが、分かる気がする・・・・。
数は、多ければいいわけではないんだ・・・・。
とても参考になった・・・。
11時オープンから3時間後、午後2時に、
一度、日本人仲間で、集まって休憩する約束がしてある。
時間は、午後1時を回っている・・。急に、お腹が減ってきた・・・。
まだ、あと一時間・・・。内緒で食べちゃおうかしら・・・。
いやいや、約束破って、自分だけなんて、やっぱり気が引ける・・。
もう一度、気を取り直して、見て回る・・。空腹が、集中力を分散させる。
食べ物の事ばかり、考えてる・・。ロンドンの業者に、
「おーい、興味のない博物館に連れて行かれた子供みたいに歩いてるよ!」と、
声を掛けられた!そんな風に見えるのか・・・。そうか・・。
そんなんじゃ、良い物が買えるわけも無い。
気持ちの切り替えが必要だ!
競馬場の、観戦スタンドの上の室内でやっているので、表に出てみた。
広大な競馬場が、目前に広がる。芝のグリーンが目に眩しい。美しい風景・・・。
寒さに震えた、昨日と打って変わって、暑いほど・・。
この季節のロンドンの気候は、全く読めない・・・。
少し、リフレッシュしたので、もう一度、集中してみて歩く・・・。
突然、目に、バーンと大きな魚の形のカッティングボードが、飛び込んできた。
デカイ・・・。けど、かわいい!すっかり、心、奪われた!
でも、何に使うんだろうか・・?
匂いを嗅いでみても、魚の匂いはしないし・・・・。う~ん・・・・。
足の処理を見ると、1940年から50年台という感じか?
シーフードレストランの看板に使えるかな?
パーティーで、人が集まった時の、オードブル用の大皿に、ちょうどいい!
持って歩くには、大きすぎるので、預けておく。
買った場所を、忘れてしまわないように、
お店のスタンド番号と、店の人の特徴を、メモしておく。
(金髪のくるくるパーマ、60歳くらい。赤イヤリング、赤い口紅、大きい指輪)
このメモが大切!けっこう、後で役に立つ!
お腹が減ったのも、忘れてしまった・・・・。
弾みがついたのか、大きな花瓶も見つけて購入する。
可愛いアクセサリーも発見!
空腹は、頭をと感性を、クリアーにしてくれる事を知った・・・。
あっ、2時だ!わーい!ご飯だ!ご飯だ!レストランに、急いだ。
入り口で、皆が立っているのが見える。
座ってればいいのに・・・。
あれっ、こっちに来てくれる。迎えに来てくれたの!?嬉しくて声を掛ける!
「ごめんね!私、遅れちゃった?」
「何だか何にも買えなくって、疲れたから、僕たち、先に休憩しちゃった!」
「ええっーーーーーーーー?」
「なんだ!電話、くれればいいのに!休憩したかったけど、待ってたのに・・。」
彼らには、たいした事ではないようだ。
「じゃあね!お先に!3時くらいにロンドンに帰るからね。」
無情にも全員、立ち去った・・・。こんなに、楽しみに待ってたのに・・・・・。
子供だったら、傷ついちゃうんだからね!!!
もうっ!ほんとにっ!空腹は、怒りを倍増させるらしい・・・。
寂しいけれど、急いで、食べなくっちゃ!
ホットミールのコーナーに行く。カレーか、ラザニアか、ベイクドポテトか・・。
うーん、どんぐりの背競べ・・。
カレーとナン、と言う気分でもないし、
ポテトに、何か掛かってるだけって言うのも、さみしい気がする・・。
カロリーは凄いけど、ラザニアかな?こういう所は、セルフサービスが普通。
トレイを持って、注文し、その場で受け取る。ラザニアを注文すると、
ベジタリアン用のパスタと、どっっちがいい?と聞かれる。
じゃあ、それにする、と注文したら、もう、終わり掛けで余っているのか、
思いきりたくさん盛ってくれる。
多すぎると言うと、ニッと笑った。サービスなんだ・・・。
付け合せの野菜は?と聞くので、ポテトと、人参と、キャベツを頼むと、
またまた、載せる載せる・・。
あっ、やだ・・・。山盛りになった・・・・。馬の餌みたい・・・・・。
ニコニコと手渡してくれた。

0617


うーん、まあ、お腹も減ってるし、頑張ってみよう!
食べても食べても、減らない気がした。単調な味・・。
久しぶりに、イギリスの味に、出会った感じがする。
塩と胡椒、いっぱい使ってしまった。しかし、残念!完食ならず・・・。
醤油があれば、もう少し行けたかも・・・。
どうしても、食べ切れない・・・。ごめんなさい。
味はともあれ、すっかり、満腹になった。
あとは、3時までゆっくり、見てまわろう・・・。
たくさんは買えていないが、お魚のカッティングボードが、やけに嬉しい。
そうだ、あれ、今度のDMに使おう!色んなプランが、頭に浮かぶ。
帰りは、運転してくれた人の帰り道にある地下鉄の駅で、降ろしてもらった。
お魚のボード、入れる袋が無かったらしく、お紐でくくってくれただけ・・・。
大きな魚をぶら下げて地下鉄の駅・・・。
大漁の感じは出ているものの、皆が見る・・・。
地下鉄の入り口で、急いで電車に乗ろうと思ったが、足が止まった。
何て、素敵な色のタイルだろう・・・。特注だ・・・。
あれはきっと、19世紀末のミントンのタイルに違いない・・。
切符売り場が、アンティークのまんまだ。凄い・・・。
良く見れば、アーツアンドクラフトの様式がそこかしこに残っている。
カメラを向けた。何だか、得した気分・・・。
地下鉄の職員に、突然、魚のボードを誉められた!「エクセレント!」 
あっ、魚をぶら下げている現実に戻された。
2日目も、無事終了した。
ずっと、日本から引きずっている喉の痛みが気になるので、
やる事は山積みだけれど、
今日は、少し、早めに休むことにする・・・。又、明日も早い・・・。

0617


1901

いつの間にか、朝5時を回ってしまった。



6月19日(水)
ふと目が覚めた。深夜の1時半・・。
ベッドに腰掛け、しばらくボーッとしている。頭はまだ寝ている・・。
こうして目覚める時は、たいてい何かやらなくてはならない時・・。
心に引っかかっているけど思い出せない・・。
頭の中のスケジュール帳が、ちっともめくれない。又、眠気が襲ってきた。
もう一度、布団にもぐって横になる・・・。
ウトウトし始めた途端、突然覚醒した!やだーー!DMの写真撮影、忘れてる・
飛び起きた!立ち上がると、地面に横たわる大きなお魚!
横には、涼しげな水色のストライプ柄のソファー・・・。
稲妻が走った!これだ!これ!結びついた!
ソファーのストライプの上に、魚のボード、載せて見る・・。
ワッ!これ、いい!
涼しげなストライプ、良く見れば、シミもあるけど、そんなの関係ない!
(最近は彼見なくなったなあ・・・。)
お魚の角度、変えてみる。ストライプに対して、斜め上に向けてみる。
うーん、間が抜けて、バカっぽい・・・。
斜め下に下げてみる。力強く、潜っていく感じが気に入った。
でも、何だろう?今一つ、海の感じが出ない・・・・。
そうだ!月曜日に、シャンデリアの壊れたクリスタルの粒、買ったんだった!
一粒では、高かったけど折れたり欠けたりしてたものも、
全部まとめて一袋買うといったら、安くなった・・・。
クリスタルのきらきらした粒、お魚の横に並べたら、
海の中の泡に見えるんじゃない?
う~ん、冴えてる、私!ロンドンでは、誰も誉めてくれないので、自画自賛!
山のような包みから、ごそごそと探すが、なかなか出てこない。
やっと、ずしりと重いクリスタルの粒!見いつけた!
手を突っ込むと、何か紙のようなもの掴んだ・・。
ん?やだ、チョコレートの包み紙!もう、ゴミまで入ってるう!
ロンドンのアンティークマーケットで入れてくれるスーパーの袋、
信用なりません!お気をつけあれ!
クリスタルの粒、並べてみた!いいぞ!海の感じと、躍動感が出た。
ボードの上に、買い付けた小物を並べる。
気分はすっかり、芸術家!やっていると、楽しくて時が飛ぶ!
何枚も写真を撮る。
買い付けと違った楽しみ!あっという間に時間が過ぎた・・・。
まあまあ、気に入った写真が撮れた。
そうそう、会社に連絡取らなくっちゃ!
あっ水曜。そうか、今日は、会社は休みか・・。
もうひと寝入りしたいところだが、いつの間にか、朝5時を回ってしまった。
今日は水曜日のマーケット、
今から出掛ければ、小さな路上店、見る事が出来るけれど、
部屋に散らばったこの荷物、何とかしなくっちゃ・・。
アパートメントホテルのたいへんなところは、毎日、お掃除が入る事。
以前は、小さなマンションを借りていたので、
床に物が散らばっているまま、出かけることが出来たが、
ホテルではそうもいかない。反面、いいところは、そのお陰で、整理がつき、
パッキングを早く進めるようになる。
マンションを借りていた時は、部屋を片付けないので、最後になると荷造りで、
髪振り乱していた・・。
買った包みを、日本から持ってきた箱に詰める。
ああ!しまった!ガムテープがない!買わなきゃ!
ガタガタ片付けているうちに、朝6時を回ってしまった。
もう、出掛けないと・・・。
出掛けは、いつも焦っている。身支度を急ぐ。 
バスを2つ乗り換えて、マーケットに着く。
スムーズに行けば、ホテルから40分・・。
最近、自分なりにホテルを決めるポイントが定まった。
思えばこの20年間、ロンドンの様々な宿に泊まった。
安いけど少し不便な地のホテル。
郊外だけれど連泊すれば安い個人のマンション。
驚く価格のバックパッカーの宿もあった。
何せ、一番怖かったホテルは、キングスロードにある「ホテル、カルフォルニア」
ホテルの入り口に、タバコ片手に、ミニスカートで、
ソバージュのお姉さんが立っていた。
最初は意味も分からなかったけど、
週末は、一晩中、酔っ払いの罵声や大騒ぎの声で眠れなかった。
ある日、荷物を引きずって帰ってくると、
ホテル横の路地で、強面のお兄さんが、何か叫びながら
いつも立っているお姉さんの髪を引っ張って、殴っていた。
見ぬ振りをしてホテルに駆け込んだ。
その夜、テレビのニュースで、麻薬中毒者の殺人事件を報道していたが、
その場所は、驚いたことに、私のホテルの、目と鼻の先だった。
最近、私なりに達した結論は、
ホテルは、交通至便な中心地にあるホテルが一番だと思う。
私の今のホテルは、バス停までは一分。地下鉄までは3分。
バス停前には、飲食店が軒を連ね、夜11時までやっているスーパーまである。
持ち帰りの日本食屋、マック、ケンタッキー、コスタ、文房具店、
おまけに郵便局まである。
メインの通りからほんの少し入っているので、夜は静か。
ホテルには、産直の野菜売りみたいな箱が置いてあり、
水やレトルト製品、カップめんなど置いている。
地下にコインランドリーがある。
仕事で来ているので、出来るだけ、ホテルでの煩わしさは避けたい。
そして計算してみると、よほど荷物がすごくない限り、バスを利用するので、
滞在中に3、4万円は、タクシー代が節約できる。
結果的には、郊外の安いホテルより、出費は抑えられる結果になる。
20年以上もいろんなホテルを泊まり歩いたが、
今はこのホテルが一番気に入っている。
毎回、水曜日に訪れるお店に、お土産持参で伺った。
今日はシャンデリアのフレームや、ブラケットを探す予定。
これという品は、本当に少なくなっている事を感じる。
数点、買い付けるが、特別なものが無い。
荷物を置かせてもらって、その界隈を見て回る。
年々、商品が減っている・・。これだけは確か・・・。
昔のように、ワクワクする買い付けが減っている気がする。
まあ、今、生産している品じゃないからね!
一日、見て回った割には、収穫が少ないが、仕方ない。
帰り際に、ディーラーから、有名なエンジェルのアーケードが、
今年いっぱいで、無くなる事を耳にした。
ロンドンは、不動産が好調で、
古くからの地主たちが、高値につられて手放しているらしい。
来年から、新しくビルになる工事が始まるらしい。
何だかセンチメンタルな気持ちになりながら、帰途につく。
アンティーク業界の流れは、確実に変わっていること、肌で感じた一日だった。
明日は、かなり早出になる上に、やっとシングルが空くので、
今の部屋、チェックアウトしなくてはならない。
留守中に、部屋の移動を、ホテルの人にやってもらう為、
完璧な荷造りをしなければならない・・・。
帰ったら、荷物をまとめるの、たいへんだ・・。
気合を入れて、帰途についた。

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6月20日(木)

朝4時・・。目覚まし無しで、すっと目が覚めた。
今日は、朝6時45分にTower Hill の駅で、
デリック・ジョーンズ氏と待ち合わせている。
久しぶりに作る家具コンテナの打ち合わせと、
もし時間が許せば、家具の買い付けに出る為だ。
3年間のブランクが、妙に長く感じられる・・・・。
家具の輸入を見合わせて、3年が経った。
20年間変わることなく、ロンドン出張中は、火曜日と木曜日、
必ずTower hillの駅で、6時45分に、彼と待ち合わせた。
車で拾ってもらって、南や北のいろんな地方に家具の買い付けに出ていた。
彼の車は最初は、大きなトラックだった。
地方で買い付けに回り、その場で買った家具を載せ、
家具でギュウギュウ詰めのトラックで、ロンドンに日帰りした。
2日後には又、空のトラックで、ニコニコとTower Hill駅に現れた。
トラック満載の家具を、1日で、空っぽにして現れる彼は、スーパーマンに見えた
次第に、私の買い付け量が増えて、そのトラックでは間に合わなくなり、
乗用車に代わった。 取り敢えず買いつけをして、インボイスをもらう。
デリックは、いつも、無造作にポケットから、
50ポンド札(¥1万1千円相当)の束を取り出し、
(いつも、30枚から50枚、ポケットから出てきてギョッとするが、
見なかった振りをする・・・。)支払う。
そして、次の買い付け場所に向かう。
数日後に、デリックの配下の人が、ピックアップに回ってくれる。
これは、以前に比べて、ほんとに楽チン・・。
以前、大きなサイドボードを買い付けると、車に積むという作業が避けられず、
買い付けに邪念が入った。
後に、ピックアップしてもらえるようになってからは恐ろしく何でも買った。
鋼鉄の扉も、石の犬も・・・・。
買って買って、買いまくった20年だった。
日本人の私には、すべての品が珍しかった・・・。
時間より2分遅れてしまった。バスとタクシーの時間が計れなかった。
いつもの場所。あっ、デリックが手を上げている・・・。
本当に、久しぶりだね!走り寄って、取り敢えずハグする。
この頃になって、やっと慣れてきた。最初は、どうにも緊張した。
日本にハグの習慣は無い。久しぶりの意味を込める。車に乗り込んだ。
いつ見ても、ジェット機のようなイメージのBMW。

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3年前と同じ。ベンツより高いらしい。いつもの笑顔だ・・。
デリック、ちっとも変わっていない・・・。
全然変わっていないわ!いくつになったっけ?」照れくさくて、先行を仕掛けた。
何か話そうとした彼の口元が緩んだ。
「お前も変わっていないな!いくつだ?」思わず、笑い合った!
そうだね、お互い、公平に歳は、取ってるんだもん・・・。
20年間、一緒に商売をしてきただけに、ぎこちなさが取れるのも早い。
「あの人はどうした?」「この人はどうしてる?」
話しているうちに、3年のブランクはあっと言う間に消え去った。
ところで、聞かなかったけど、どこに行くんだろう・・?
見慣れた風景になってきた。「どこにいくの?」「エドモントンの倉庫・・・」

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倉庫といっても、40フィートのコンテナが、3つ置いてあって、
彼は、そこにストックを保管している。
フェンスが張り巡らされた大きな敷地の入り口に、管理人小屋がある。
デリックを見ると、管理人がガラス越しに手を上げた。
そのまま、広い敷地を車で進む。
彼の倉庫が右手に見えてきた。
コンテナの前で駐車すると、車の中で、家具の写真を見せられた。
個性的で、コンディションのいい家具がいっぱい!
価格を聞く・・。どれもこれもリーズナブルだ。
これ全部、ここにあるの?尋ねると、NOという。
今、イギリスの家具業界は、在庫も少なくなり、
いい家具は恐ろしく高く、安い家具は、なかなか売れない。
みんな、目が肥えてきたという事かもしれない。
「実は、アメリカから、逆輸入したんだ。」 驚いた!私と知り合うもっと前に
デリックは、20人位の従業員を使って、毎週毎週、
アメリカに40フィートのアンティーク家具を、送っていたとは聞いていた。
3人の子供は、
一時、カルフォルニアのホテルから学校に通っていたとも聞いている。
私と商売始めてからも、月に一本は、アメリカに輸出していた。
今度は、向こうから家具を戻すのか・・・?
恐ろしく商才に長けた人である。
そして、驚くほど、人を信じる事には躊躇しない人である。
私も何度も助けられてきた。彼を頼りにする人は、本国にもたくさんいる。
この人と知り合えた事は、私の強い運である。
アメリカから、9月に逆輸入のコンテナがやってくると言う・・・。
見てみたいものが、山済みだ。
彼がどんな気持ちで、この写真を、私に見せたのか、まだ明らかではないが、
次回、9月の渡英には、この倉庫に荷物が着いているはずだ。
管理人が、自転車に乗ってやってきた。
彼の倉庫の鍵を管理しているようだ。コンテナの扉を開ける。
入り口までぎっしり詰まった家具と小物達。あふれんばかりだ。
奥に進むには、家具を出さなければならない。
狭い中で、山のように積まれた家具を、2人で、表に引きずり出す。
すごいストック量だ。壁際に設置された棚には、
ガラスや陶器の小物類が、恐ろしいばかりに積み上げられている。
ガラクタのようだが、ウエッジウッドもスージークーパーも、
ロイヤルウースターまで含まれている。
彼には何か計画があって、長い時間を掛けて、集めたらしい。
無理を言って、数点ストックの中から買わせてもらった。
どんなプランがあるのか、気になりながらも倉庫を後にする。
このエリアも開発が進み、大きなショッピングゾーンになる為、
今年いっぱいで、倉庫を立ち退かなければならないと、
彼から聞いたのは、別の家具倉庫に着く直前だった。
驚く間も無く、グリニッチにある大きな家具倉庫に着いた。
ここは、半端ではないストック量に定評がある。
そして、価格は高いが良い物がある。いつも、買い付けの最後に立ち寄る。
扉を開けると、知った顔がいつもの笑顔で迎えてくれた。
中に入ると、いつもと様相が違う。家具が、うんと少ない。
10メートルはあると思われる天井の近くまで積み上げられた
家具類に圧倒されるイメージだったのに、確実に減っている。
驚いて振り返ると、デリックが、頷きながら、
「ここも今年いっぱいで、閉めるそうだよ。」と、肩をたたいた・・・。
隆盛を極めたアンティーク黄金時代を支えた老舗だった。
これは、今後買い付けがたいへんになるぞ・・・。
と思った途端に、壁際に積み上げられた革張り風の椅子が目に入った。
60脚はある。しっかりと組み直されていて、
背中と座が濃いブラウンのレザー風の素材で張り直されている。
いける!!

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家具を見る目には、自信がある。すぐにデリックが、価格を聞きに行ってくれた。
政府機関から出た椅子で、メンテナンスしたのに間も無く、
計画の変更で市場にだされたらしい。
すでに何脚かは、売れていると言う。残り36脚を買い付けた。
他にもオーバルのコーヒーテーブル、ソファー、注文いただいている椅子など、
数点買い付けた。
少ないが、満足のいく買い付けとなった。
これから、9月まで、デリックにリクエストを出しながら、
写真で買い進めていくことになる。
9月の直接買い付けで、40フィートのどれくらいまで、埋まるだろうか。
勝負は、9月だ!中途半端な時間になってしまったので、
近くにあるミレニアムドームに、食事に行った。

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デリックは歩いて20分の距離に自宅があるので、よく来るらしい。
私は初めて!丸いテント張りのドームから、
数本天に向かって突き出したクレーンが、有名だが、
何だか奇怪な感じがする。入り口付近に大掛かりなセットが組まれている。
レッドカーペットが敷かれて、何か、ただならぬ雰囲気・・・。
セットは組んでいる途中で、ナ二アとか、何とか書いてあるが読めない・・・。
デリックが発音してくれるのに、良く分からず、まあ、いいかと思いながら、
若者たちが列を成していたので、何で並んでるの?と聞いてみた。
「知らない!皆が並んでいるから!」 
思わず、デリックと吹き出してしまった!
広いフードコートを歩いていると、「わさび」と言う名のくるくる寿司を発見!
デリックも日本食は好物。
迷わず入った。かっぱを取ったら、デリックが、1個欲しいと言うのであげたら、
鼻を真っ赤にして苦しんでいた。
わさびが利きすぎている!デリックは、いなりも苦手のようだ。
あまからという味に弱いのかな?少し甘すぎる気もした。
マントをひるがえした中世の騎士のような人が通っていった。
突然、ひらめいた!ナル二ア国物語のデモンストレーションだったんだ!
胸のつかえが取れた気がした・・・・。
でも、いい休憩になった気がする・・・。
いろんな事が、頭の中を、凄い勢いで駆け巡った一日だった。
やっぱり、休憩は、必要だったんだ・・・。

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